WEB広告におけるクロスデバイス測定とは
1. クロスデバイス測定の概要
クロスデバイス測定とは、ユーザーが複数のデバイス(スマートフォン、タブレット、デスクトップPCなど)を使ってウェブサイトやアプリケーションにアクセスする際、その全体的な行動を追跡・分析する手法です。現代のユーザーは、一つのデバイスに限らず、複数のデバイスを使い分けてインターネットを利用するため、広告効果を正確に把握するためには、ユーザーがどのデバイスでどのような行動を取ったのかを把握することが求められます。
クロスデバイス測定を行うことで、ユーザーがスマートフォンで検索し、デスクトップで購入に至るといった一連の行動を正確に理解できるようになります。これにより、広告の効果測定や最適化が進み、より効率的なマーケティング戦略を構築することが可能となります。
2. クロスデバイス測定が必要な理由
2-1. マルチデバイス利用の普及
今日のユーザーは、スマートフォンやタブレット、PCなど複数のデバイスを使って情報収集や購入を行うことが一般的です。ある調査によると、多くの消費者が一つの購入プロセスで複数のデバイスを使用し、例えばスマホで商品の検索を行い、デスクトップで購入を完了させるなど、デバイスをまたいで行動しています。
そのため、クロスデバイス測定を行わないと、広告の効果を正確に測定することが難しく、特にコンバージョンまでのユーザー行動を追跡できない可能性があります。たとえば、スマートフォンで広告をクリックしたが、最終的にデスクトップで購入した場合、デバイスごとのデータしか取得できないと、スマートフォン経由の広告効果を見逃してしまうことになります。
2-2. ユーザー行動の全体像を把握するため
クロスデバイス測定を活用することで、ユーザー行動の全体像を把握し、マーケティングキャンペーンの正確な評価が可能になります。デバイスごとに分断されたデータではなく、統合的なデータを収集することで、ユーザーがどのデバイスで広告に接触し、最終的にどのデバイスでコンバージョンしたのかを一貫して追跡できます。
これにより、以下のようなインサイトが得られます。
- 最適なデバイスの組み合わせ:どのデバイスで広告に反応し、最終的にどのデバイスでコンバージョンに至ったかを把握することで、効率的な広告運用が可能になります。
- ユーザーのクロスデバイスの旅路の理解:ユーザーがどのデバイスで情報収集を行い、どのデバイスで購入に至るかを把握し、広告戦略を最適化できます。
3. クロスデバイス測定の仕組み
クロスデバイス測定では、広告プラットフォームやアナリティクスツールが、クッキー(Cookie)やログイン情報、さらにはデバイスIDを使用してユーザーを追跡します。これにより、複数のデバイスで同じユーザーを特定し、行動を統合することができます。
3-1. クッキーとデバイスID
クッキーは、ウェブサイトがユーザーのブラウザに保存するデータで、ユーザーが再び訪れた際にその行動を追跡するために使われます。ただし、クッキーはデバイスごとに保存されるため、スマートフォンとデスクトップPCでの行動を一貫して追跡することが困難です。ここで役立つのがデバイスIDです。デバイスIDは、モバイルアプリやデバイスに固有のIDで、アプリ内広告やトラッキングに用いられます。
3-2. ログインベースのトラッキング
ログイン情報を使ったクロスデバイス測定も一般的です。たとえば、GoogleアカウントやFacebookアカウントを使用して複数のデバイスでログインしている場合、これらのアカウントに基づいて、ユーザーの行動を統合的に追跡できます。この方法では、デバイスをまたぐ行動を正確に把握でき、クッキーを使用したトラッキングの限界を克服できます。
4. クロスデバイス測定のメリット
4-1. コンバージョン率の向上
クロスデバイス測定により、ユーザーがどのデバイスで広告を見て、どのデバイスで最終的に購入や問い合わせをしたかを把握できるため、マーケティングキャンペーン全体の効果を正確に測定できます。このデータを活用して、最も効果的なデバイスや広告の組み合わせを特定し、コンバージョン率を向上させることができます。
4-2. より精度の高い広告配信
クロスデバイス測定のデータを使うことで、広告キャンペーンのパフォーマンスを最適化し、ユーザー行動に基づく広告配信が可能になります。たとえば、スマートフォンで商品の比較を行っているユーザーには、そのままスマートフォン上で特定のオファーを表示し、デスクトップで購入を完了しそうなユーザーにはデスクトップでのリターゲティング広告を出すなど、最適な広告配信が実現します。
4-3. 効率的な予算配分
クロスデバイス測定によって、どのデバイスが新規顧客獲得やコンバージョンに効果的かを把握できるため、広告費用を最も効果的なデバイスやチャネルに配分することが可能です。無駄な広告予算の削減と、高パフォーマンスを引き出す広告運用が実現します。
5. クロスデバイス測定の課題と対応策
5-1. プライバシーの問題
クロスデバイス測定には、ユーザーの行動を追跡する必要があるため、プライバシー問題が課題となります。特に、欧州のGDPR(一般データ保護規則)や、カリフォルニア州のCCPA(消費者プライバシー法)など、プライバシー保護規制の強化により、広告主はデータの取り扱いに慎重でなければなりません。
対応策としては、ユーザーの同意を得た上でクッキーやトラッキングデータを収集し、プライバシーに配慮した広告配信を行うことが求められます。
5-2. データの統合と分析
クロスデバイス測定では、複数のデバイスからのデータを統合して分析する必要がありますが、そのプロセスは技術的に複雑です。各デバイスから取得したデータを一貫してまとめることが難しく、正確なユーザー行動を把握できない場合もあります。
対応策としては、統合データ管理プラットフォーム(DMP)や、アドテクノロジーの活用により、データの一元化と効率的な分析を実現することが重要です。
6. まとめ
クロスデバイス測定は、現代のユーザー行動に適応した広告運用に不可欠な手法です。マルチデバイス利用が一般的となった今、ユーザーの全体的な行動を把握するためには、スマートフォン、デスクトップ、タブレットなど、複数のデバイスでの行動を統合的に追跡する必要があります。クロスデバイス測定を活用することで、ユーザーの購買プロセスを深く理解し、効果的な広告運用と最適な予算配分が可能となります。